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またまた映画の感想です。

 先日、「闇の列車、光の旅」(原題はスペイン語で「Sin Nombre(名無し)」という映画を観てきました。物語の舞台はメキシコ。主人公はホンジュラスからアメリカへの移民(といってもイリーガルな)を父、叔父と目指す少女とメキシコのギャングの少年。貧困と暴力が渦巻く社会にいきる若者といっても子どもに近い二人の偶然の出会いと旅を描いたロードムービーです。命をかけて新しい生活を求めてアメリカを目指す多くの人々。暴力を基本とした組織の中でしか自分の居場所を見いだせない少年たち。物語はフィクションではあるが、そこには厳しい中米の現実が見えてきます。
 私は数年前にサンディエゴを訪れた時に、海岸から延々と内陸に向かって続く、アメリカとメキシコ国境のまるで万里の長城のような壁を見て大きな衝撃を受けました。アメリカ側では国境警備隊のパトカーが壁沿いにパトロールをしており、壁の向こうのメキシコ側の高台からは若者や子どもたちがアメリカ側を眺めていました。そばのロスへと続くハイウェイには女性と子どもが道路を横断する姿の標識。これはもちろん、夜に国境を越えた移民が道路を横断すので、その注意を促す標識ですが、いわば事故がよく起こっているとういうことでもあります。まさに命がけで道路を横断するのです。
 映画の宣伝には「どんな困難があっても生き抜く人々の強さ、美しさが熱く胸を打つ!」とありましたが、そうなんでしょうか?私はサンディエゴで見た光景も思い出されて、命をかけて危険を冒さなければ生きていけない人々、特に子どもたちが存在していることの現実に胸が締め付けられました。
 一方で、貧困や暴力は遠い国の話ではありません。私たちの身近なところにも多くの貧困の現実があります。そしていじめはいうまでもなく、社会では様々な暴力が生起しています。そのことをしっかりと認識して、生徒たちと向き合っていかなければならないと思います。