「ぼくの大好きな街、広島。緑いっぱいの美しい街です。65年前の8月6日、午前8時15分。人類史上初めて、原子爆弾が広島に落とされました。
一瞬のうちに奪われた尊い命。変わりはてた家族の姿。原子爆弾は人々が築きあげた歴史や文化をも壊し、広島の街を何もかも真っ黒にしてしまったのです。
しかし、焼け野原の中で、アオギリやニワウルシの木は、緑の芽を出しました。人々も、街の復興を信じて、希望という種をこの地に蒔きました。傷つきながらも力いっぱい生き、広島の街をよみがえらせてくださった多くの方々に、ぼくたちは深く感謝します。
今、世界は、深刻な問題を抱えています。紛争や貧困のために笑顔を失った子どもたちもたくさんいます。私たちの身近でも、いじめや暴力など、悲しい出来事が起こっています。これらの問題を解決しない限り、私たちの地球に明るい未来はありません。
どうしたら争いがなくなるのでしょうか。どうしたらみんなが笑顔になれるのでしょうか。ヒロシマに生きるぼくたちの使命は、過去の悲劇から学んだことを、世界中の人々に伝えていくことです。悲しい過去を変えることはできません。しかし、過去を学び、強い願いをもって、一人一人が行動すれば、未来を平和に導くことができるはずです。
次は、ぼくたちの番です。この地球を笑顔でいっぱいにするために、ヒロシマの願いを、世界へ、未来へ、伝えていくことを誓います。
平成22年(2010年)8月6日
こども代表
広島市立袋町小学校6年 高松樹南 広島市立古田台小学校6年 横林和宏」
65回目の原爆忌の平和祈念式典におけるこども代表の宣言です。
実は私の大叔母は小学校の教員でしたが、広島の原爆で命を落としています。毎年、この時期には父からその大叔母さんの思い出話を聞かされていました。
上の宣言を聞いて、改めて考えさせられたのは中段の「今、世界は・・・、私達の地球に明るい未来はありません。」という部分です。特に「私たちの身近でも、いじめや暴力など、悲しい出来事が起こっています。」という箇所で、この間、連日のように報道されている児童虐待のニュースを思い起こさずにはいられませんでした。西区のマンションで飢えと暑さの中で、衰弱し、命を落としていった3歳と1歳の幼子。こんな悲しくも残酷なことが、私たちのすぐそばで起こっているのです。
今日から高校野球が甲子園で開幕され、元気に球児たちがグランドを駆け回り、応援団がスタンドで声をからして、それぞれの青春を燃やしています。いつ見ても素晴らしい光景です。一方で、亡くなった2人にも本来ならこうした未来があったはずだと思うと、なんともやりきれない気持でいっぱいになります。豊かな社会や明るい未来の原点は、私たちの身近にいる子どもたちの希望に満ちた笑顔です。
改めて、次代を担う高校生たちに、過去の歴史とともに身近な社会で生起している厳しい現実をきっちりと伝え、命とは何か、自分たちはどう生きるべきか、そして社会に対してどう貢献すべきかを考えさせていかなければならないと実感いたしました。